1980年日本テレビで放送されていた勝新太郎、脚本、監督、主演の「警視-K」というドラマをご存知でしょうか?
今なんとアマゾンの日本映画NETで全編観ることができるようになっていました。
「警視-K」ってどんなドラマ?
1980年10月から日本テレビで放送された警視-Kは勝プロダクションの制作で勝新太郎扮するはみだし刑事の賀津(ガッツ)警視が事件を解決していく警察ドラマでした。勝新太郎が制作、監督、主演するということでは話題になりましたが、そのあまりに先鋭的な内容に視聴率は上がることはありませんでした。
「警視-K」視聴者ついて行けず13回で打ち切り
当時一部の人々には人気があったもののあまりの視聴率の悪さと、いつもの勝新のスケジュールや予算無視の制作に回りがついて行けず13回で打ち切りになりました。日本テレビはなんとか予定の26回続けようとしたようですがマイペースを崩さない勝新にあきれて力尽きました。
「警視-K」全編アドリブ、すべて同時録音
視聴者も驚きました。台本なんてあってないようなもの。ほぼ全篇アドリブ。カメラの超長回し、同時録音。
同録なのでボソボソしゃべってほとんど何言ってるかわからない。ノイズも入ってる。だからストーリー展開の意味もよくわからない。大きな盛り上がりも無い。
特に打ち切りが決まってからの回はワンカットで個性派俳優の一人アドリブ芝居状態。舞台みたい。
勝新の愛娘の奥村真粧美が究極の素人演技で見ていて恥ずかしい。
番組終了ちかくには婦人の中村玉緒まで出てきて無意味な親子の会話をずっと見させられる。
テレビ局にはクレームが殺到したそうです。
あまりに早すぎたその制作方法
でも勝新はスタイルを変えなかったのです。だって世の中警察だってそんな派手な事ばっかりやってるわけでは無いし。
みんなが活舌よくしゃべったり、普通の会話では今のテレビドラマみたいにすべて言葉で説明したりしない。
実際の人間の会話ってこうだろう!って。俺が刑事ドラマ作ったらこうなる!
家族の内輪の話だって「俺がつくるからいいんだ!」と言った(と思います)。
「警視-K」の豪華な出演者
出演者も勝新が好きで選んだ名優がズラリ登場しました。第九話 オワリの日 |
第五話 まぼろしのニューヨーク |
第十一話 その人は…ママ |
第十話 いのち賭けのゲーム |
第十三話 マイ・シュガー・ベイブ |
第十三話 マイ・シュガー・ベイブ |
音楽は山下達郎
個性派俳優のアドリブ演技の盛り上がりをラストで毎回下手っぴな演技でぶち壊しながらもだんだんクセになる真粧美と勝新のからみに流れてくる音楽はブレイク前の山下達郎。曲はマイシュガーベイブ。
望遠で撮られた夕暮れキャンピングカーに余韻が漂い、頭から離れない音楽です。素敵です。
全篇改めて観て思った事
当時はビデオをはまだ無くて録画なんかできません。当然火曜日夜九時にテレビの前にいないといけない訳ですからと全部は見ていないですし、後半は記憶にもありませんでした。でも当時自主映画などが大好きだった私は「このリアリティなんだか凄い」と感じたことをしっかりと覚えています。
刑事ドラマでも当時は「大都会PARTⅢ」とか「西部警察」より倉本 聰の「大都会 戦いの日々」のリアリティの方が好きでしたからね。
「警視-K」DVDBOXはあったようですが、買うまでには至らず、大人になってももう一度で観る機会はないものかといつも思っていたところに今回の全編の公開。
Amazonで見つけたときは「おっと!」と思わす声をあげましたよ。
今回全編見直してこのドラマの斬新さに改めて驚きました。
ボソボソしゃべって何言ってるのかわからないけれど(字幕必要レベル)尋常じゃない自然な感じ。
出演者がほとんどアドリブだから、言い間違えたり、言葉に詰まる。セリフがかぶって言いよどむ。おまけに照れ笑い。
こんなのやっぱり見たこと無い。しかしこのリアリティは鳥肌ものでした。ほとんど実験映画のようでした。
言ってみれば勝新の勝新のための勝新家の家族ドラマをに火曜日夜9時に実験したのだと思います。
家族の意味ない会話も「見たい奴だけが見ればいい」
きっと勝新はこう考えていたのでしょう。
まあこんなの夜9時にやっても見る人が少ないのは当然でしょう。
しかし現代であればこのドラマの凄さに気づいて深夜で再放送とかしたら結構再評価されたりするのではないでしょうか。
まあ間違いなく今後こんなドラマは作られることは絶対無いでしょう。
いろいろ言いましたが、見たこと無い人にこの感覚を伝えることは非常に難しいです。ぜひ一度観て下さい。そして再評価をみんなで進めてテレビで再放送してもらいたいもんですね。
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